地下鉄サリン事件の実行犯である林郁夫受刑者から、事件を全面自供させた元警察官、稲富功氏。この元警察官の稲富功氏がどんな人なのか気になったので、詳しく調べてみました!
林郁夫の全面自供とは?
オウム真理教の幹部だった林郁夫受刑者は、当時地下鉄サリン事件の散布実行犯でしたが、逮捕されたのは別件で当初は警察に対しても反抗的な姿勢を見せていました。が、突然サリン事件とは別の事件についての取り調べ直後、突然「私が撒きました」と話し出したのです。
警察関係者も、林郁夫がサリン事件に関わっているとは全く予想していなかった為、林郁夫がこの自供したときは「嘘をついているのではないか」「誰かをかばっているのではないか」と疑っていました。
しかし林郁夫の自供は本当であると認められ、その後も地下鉄サリン事件の全容だけでなく、オウム真理教関連の事件についても詳しく語ったのです。後に、この全面自供が検察から自白と認定され、林郁夫は他の実行犯のように死刑ではなく無期懲役の刑が決定しました。
そして、この林の全面自供を引き出したとされているのが当時警視庁の刑事だった稲富功氏なのです。
稲富功ってどんな人?
では、その稲富功氏とはどんな人なのでしょうか?
稲富功氏は元警視庁捜査一課刑事で、1969年に警視庁に入庁。
以降、2007年の退職までのほとんどの期間を刑事事件に従事されていました。地下鉄サリン事件2日に行われた強制捜査では、稲富功氏は山梨県上九一色村にあった第6サティアンの捜索差押え責任者でした。
そして1995年4月、林郁夫の身柄が石川県内で確保され、稲富功氏が取り調べ担当官に任命されたのです。
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稲富功氏が林郁夫に行った取り調べとは?
稲富功氏はまず林郁夫受刑者本人の知性に着目しました。そして行ったのは、林との信頼関係の構築。
その為に、オウム問題に詳しい滝本太郎弁護士の元を何度も訪ね、洗脳状態にある信者に対する接し方などのアドバイスを受け、「麻原彰晃の名前を呼び捨てにしない」「林郁夫のことを”先生”と呼ぶ」などの行動を取り、林の入信前の記憶を呼び戻そうとしました。
容疑者のことを”先生”と呼ぶことに対して叱責してくる上司もいたそうですが、稲富功氏は信念を曲げず真摯な態度で取り調べを続行したそうです。
また林が活字に飢えていると見抜いた稲冨氏は、規定に反して本を差し入れたこともあるそう。その本の一冊はミルグラムの『服従の心理』で、刑事が口で言うより林の知性に訴えかけ、本を読ませ考えさせることにしたそうです。
さらに、稲富功氏は新聞を読むことも許可しました。ある日、新聞を読み終えた林が「私もジョン・デンバーを見たんです」と言いました。それは林が入信前に妻と行ったコンサートの記憶だったそうで、この発言で稲冨刑事は昔の記憶が戻ってきていると確信したそう。
その後、林はサリン事件でサリンの散布の実行を自白し、関与したオウム信者の名前も挙げたのです。
稲富功氏と林郁夫のその後
林郁夫の全面自供により実行犯5人と送迎役5人が判明し、事件の首謀者は逮捕されました。林郁夫受刑者はオウム事件に関する全面自供や捜査に対する協力する姿勢などが検察で自首と認定され、1998年5月死刑ではなく無期懲役刑が確定し、現在は千葉刑務所にて服役中です。
のちに林に稲富さんが会いに行くと、林は「同じようなことが起こるとしたら食い止めたい。」などと話したと言っていました。
稲富功氏と林郁夫受刑者は現在も手紙のやりとりなどで交流を重ねているんだそう。
稲富功氏は2007年に警視庁を定年退職のあと、オウム事件のパネルディスカッションに討論者として参加するなどの活動を行っています。
まとめ
というわけで、林郁夫受刑者の取り調べを担当した刑事の稲富功氏について調べてみましたが、いかがでしたか?
この記事を簡単にまとめると
- 稲富功氏は、元警視庁捜査一課刑事
- 林郁夫受刑者の取り調べ担当官で、全面自供を引き出した警察官
- 稲富功氏は林の知性に着目し、入信前の記憶を呼び戻せるような行動を取った
- 規定で禁止されている本の差し入れや、新聞を読むことも許可し、真摯な態度で取り調べに望んだ
- こうした行動が林郁夫受刑者との信頼関係の構築につながり、全面自供を引き出すことに成功した
- 林郁夫受刑者はサリン散布実行犯の中で唯一の無期懲役刑
- 現在も林受刑者と稲富功氏は手紙などのやりとりで交流を続けている
という感じです。
林受刑者が無期懲役刑になったのは、もちろん自分が自白したからということもあるんでしょうが、稲富功氏の影響も大きいと思いますね。
稲富功氏が取り調べを担当していなければ、全面自供はなかったかもしれないですし。そう考えると、稲富功氏が成し遂げた功績は素晴らしいですね。
事件から20年近く経ってやっと当時の警察内部の行動についても報道されるようになってきましたが、警察の初動捜査がきちんとしていればサリン事件は防げたという意見もあるようです。
今後、このような事件が絶対に起きて欲しくないと切実に願っています。
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